オーディオ・アクセサリー '97 秋号より
国生裕子はこざかしい戦略とは無縁に、純粋に自分の感性と向き合い、音楽にしている 作曲家/ピアニストである。 曲のタイトルからしておおらかである。「桜の花の咲く前に」「月」 「かまくら」、 また「はしっとせんか!(=しゃきっとしなさい)」「グラシカ(可哀想)」など、 鹿児島出身の彼女が鹿児島弁をタイトルにしていることからも、とても個人的な地点から表現しよ うとしていることがわかる。
ところでなぜ「かまくら」なのか。「鎌倉の海からメロディが来たんです」 と国生は言う。「海が好きで、お寺が好きで、鎌倉によく行くんです。砂浜に座っていたら来たんですよ。「 ラーラーラってね・・・」とくちずさんでみせる。みこのようである。 他の曲も同様、 常に”来る”のを待っているという。そしてそれらはフルートやサックス他、ジャズコンボの形で メンバーの自由な表現を幾色にものせて完成される。
本当に口から語る様なイントロと、日本的な響きなどから、映像を呼ぶ要素も強く、 真っすぐな感性から生まれるもののパワーを感じた。 磯野